国境税(Border Tax)について考える

トランプ氏はアメリカの税制を改革し、経済成長を促進しようと考えているのは周知のとおりです。その中でも重視されているのが、法人税の改革となります。共和党は経済政策の柱の一つとして、国税にあたる連邦法人税率の引き下げに加え、仕向地課税主義(貿易での二重課税を防ぐために、輸出時に課税を免除し輸入時に課税する考え)の導入の検討を進めてきています。それが実現すれば、米国への企業の回帰と輸出企業のサポートを、同時に進めることができると考えられるからです。

トランプ氏は税制優遇措置をとることで、海外に移転した企業を米国に呼び戻し、外資企業も誘致して米国内に雇用を創出しようとしています。ただし、トランプ氏も現時点では巨額の減税を埋め合わせる財源の確保策を示していないため、今後、米国で大幅な法人減税が実現するかはいまだ未知数であると言えるでしょう。

トランプ氏が盛んに言及するのが、「国境税(border tax)」です。1月5日にトヨタ自動車に対し、「米国に工場を建てるか、巨額の国境税を払え」とツイッターで批判したのは記憶に新しいところです。また「外国に移転する企業には相当な国境税をかける」と述べるなどの発言も、繰り返しツイッター上で行われています。そもそも、国境税とはどんなものなのか、そして実現する可能性はあるのでしょうか。

通常、この手の税金としては関税を思い浮かべる人が多いのではないでしょうか。関税は輸入品が税関を通る際に課される税金です。WTO(世界貿易機関)のルールのほか、多国間、2国間でのFTA(自由貿易協定)などの取り決めで、国・製品に応じてどれだけ課税するかの取り決めがなされ、各国で貿易が行われています。

なお、米国が一方的に非課税なものに課税を行ったり、関税を引き上げたりすることは、米国内では大統領の権限で行うことが可能ではありますが、WTOやNAFTA(北米自由貿易協定)の協定違反にあたります。ただし上述の「国境税(border tax)」は、関税そのものを指しているわけではないことには留意が必要です。関税は、あくまで「custom duty」「tariff」と訳され、「boarder tax」とは異なるのです

トランプ氏と共和党は、関税以外の手法で米国企業の輸出競争力を担保する税の枠組みを候補にあげてきています。国境で課税を調整するという意味で、「国境調整税」「仕向地課税法人税」と言われたりしていますが、簡単に言うと法人税の一種として、輸入品に課税を行う制度となります。輸出では企業の税負担を軽くし、輸入では重くするもので、議会共和党が選挙中に示した税制改革案に盛り込まれています。

米国から輸出をする場合は、税金の還付措置をとることで事実上の免税とし、米国製品の競争力が高まります。一方で、輸入品には今まで以上の税金がかかるようになるため、輸入企業の税負担は重くなります。現在は、商品を輸入した場合、課税対象の所得計算において仕入コストを差し引くことができますが、共和党案では輸入品の仕入コストを差し引くことを認めず、輸入企業にとっては事実上の増税になるとのことです。

輸出する企業には還付金が、また輸入する企業には課税を行うという点を、法人税という直接税で実現しようというのが、Border Taxの正体です。この税制のメリットとしては、企業の立地選択において法人税率が影響しない点や、移転価格の操作による利益移転が生じないということが言われています。

例えば、現状アメリカ国内で生じるべき利益を、海外子会社の利益へ付け替える(移転価格を操作する)ことで、節税の恩恵を受けようと考える多国籍企業が多くありますが、このBorder Taxの導入により、彼らの節税の誘引は抑えられることになります。なぜならば、海外子会社への支払(輸入に相当)はそもそも所得計算上控除できないため、移転価格を操作しても税額に影響がないからです。

仕向地課税法人税は、保護主義的というよりは国際貿易に対して中立的であるといえるでしょう。なお米国企業を国内へ誘導し、また輸出ビジネスに対する減税につながるこの税制は、WTOが禁止する輸出補助金に該当する可能性が高いとの指摘もあるため、その動向に注目していく必要があるといえるでしょう。

この施策によると輸入が抑制され、輸出が促進されるストーリーとなり、原則的にはインフレ、金利上昇の流れとなりドル高となりますが、果たしてそれをトランプ大統領が許すのか。どちらに天秤が傾くか、これは判断の分かれるところです。私はメインシナリオとしては、極端な円高は見込まず円安に振れる方向で相場に臨みたいと思います

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